【Amazonプライム】フランス学園ドラマ「奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ」の背景など

久々におフランス映画を見ようかな〜と見たのがこちら。

奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ (字幕版)
奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ (字幕版)

いわゆる「多種の民族背景が混在するパリ郊外の公立高校」が舞台。

そういう前提の映画といえば

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がかなり有名(パリ市内は18〜20区がそういう区画が多い)。

パリに住んでたこともあって、興味深く見た後で他の方のレビューを見てみると酷評も多いので、ちょっと私が思う、この映画の「背景」を書いてみたいと思った。

「奇跡の教室」のあらすじとは

Amazonプライムで今、無料で見られる「奇跡の教室」は、色んな民族、宗教、人種背景が混在する、パリ郊外の高校の、あまり優秀ではない生徒たちで占められるクラスが舞台。

公立高校が、というわけではなくて(実際優秀な結果を残しているリセには公立も多い)、地域的なところでレベルが低くなっている公立高校の話。

公立高校に入試があるわけではないので、基本的には居住する学区の高校に通うことになる(一部に中学校の成績表などで越境を認める公立高校も存在するらしい)。

フランスでは私立という選択肢だけではなく、「レベルの高い学区に引っ越す」という選択肢がある。
それができるのは中流以上の家庭ということになり、自ずと公立高校間に大きな格差ができる。
この高校は「貧困層の多い学区の学校」というわけである。

他の教師も皆匙を投げ、生徒たちもやる気がなく、いがみあったりもしている中、教師としての意識の高い中年歴史教師、アンヌ・ゲゲンは歴史コンクールにクラスで参加することを持ちかける。

そのテーマは「ホロコースト(ユダヤ人、またロマ民族の虐殺)」だった。

当初、白けきっていた生徒たち。ムスリムの生徒も多く(これは対ユダヤ感情として、複雑な要素となっていると思う)、不参加を決め込んだ生徒もいた。

しかし収容所からの生存者(これは役者ではなく実際に語り継いでいる人が出演した)からの話、自分なりに調べた実態で、生徒たちの意識が変わっていくー

奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ (字幕版)
奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ (字幕版)

パリには色んな世界が混ざり合っている

私はパリに住んでいたのだけど、15区といういわゆる「治安のいい住宅街」というところにノホホンと数年住まわせてもらっただけなので、実はこういう世界をよく知らない。

パリは高級住宅街で知られる16区や、サン・ジェルマン・デ・プレのある6区などにお金持ちが多いのだが、基本的には1〜17区は全般に家賃やアパルトマンの価格は非常に高いところが多い。

上に書いたように、18~20区はアフリカ系やアラブ系が多く住む地域が多い。ただしこれらの区内でも雰囲気の違う場所はある。例えばモンマルトルは19区だが下町といっても古くからの建物が多く、人気がある場所である。

ちなみにパリでは古い建物の方が価値があるとされていて、20世紀初頭以前に建てられたオスマニアン様式の方が圧倒的にアパルトマンの値段が高い(中は今風に各戸で改装する)。

滞在許可証を更新する警察署が19区にあって行ったことがあるのだけど、メトロの駅のホームに降り立った時から緊張で体が強張った。

気をつけないと後ろからひったくりに遭うかもしれない、と思ってしまう雰囲気がある。

そういう用事がなければ、殆ど足を踏み入れることがない。

「治安のいい地域」と「治安の悪い地域」では景観も雰囲気も全くの別世界、それがパリである。

この映画はパリ市内ではなく郊外の話なのだけれど、パリは北米と異なり、パリ市内に金持ちが住み、郊外はヴェルサイユやヌイイーなどの「高級郊外」や一部の「治安の良い郊外」を除くと、貧困層の多い地域となる。

女生徒のヒジャブや長いスカートが重大な校則違反という背景

フランスは多民族、多人種で、特にパリをはじめとした大都市と周辺には旧フランス領から20世紀に移民してきた層が多い。

もちろん今ではフランス国籍を持つ「〜系フランス人」や、きちんと在留許可のある人々もそういう場所に住んでいるのだが、中には不法移民も多くいる。

1950~60年代を中心にフランスは労働力が不足していたし、何しろ勝手に大々的にアフリカやカリブ地域、東南アジアなどを英国と競うようにして植民地にしていった責任もあるので、比較的移民は容易だった。

しかしそのために「フランス人」というものが変化してきて、主に宗教的なところでフランスという国の文化に影響が出てきた。

そこに不満を持つ「ヨーロッパ系フランス人(いわゆる白人)」は思想的に保守も多いが、実は政治思想的には中道とかリベラル寄りという人もそういうところがあるのだ。

はっきりいえば、ムスリム(イスラーム教徒)に反感を持つ人は多い。

例えばフランスにはフランス領だった地域のベトナム系やカンボジア、ラオス系の人もいる。彼らに対して、時に差別的な白人はいるかもしれないが、基本的にアジア系は人畜無害と思われている(新型コロナにより、謂れなき差別をこうしたアジア系フランス人も受けているのだが)。

それを白人パートナーを持ち、彼やその家族、親族が見せる「本音」的な部分を見てきた私が思うに、

フランスのやり方に逆らうことなく、良い感じで同化した生活をして、美味しい料理店や惣菜店を経営してくれてるからいい

という感覚なのである(都市部のフランス白人はアジア料理が好きだし、パリのベトナム料理などは確かに美味しい)。

つまりである。「元々のフランス人」と同じように衣服をまとって、人口もムスリムに比べてかなり小さく、たとえ時々アオザイを着ていたって、それはエキゾチックな異文化として楽しく見られるけれども、

普段着が一般フランス人と異なるーつまりヒジャブをまとった女性が増え、モスクが多く建設されてアザーン(モスクから流れる礼拝への呼びかけ)が響き渡るようにになると、それはフランスではない、と考える「元々のフランス人」が多いのである。

また、20世紀には労働力の不足を補うとされていた旧植民地からの移民も、その数が増えに増えていくと、単純に

元からのフランス人の働き口がなくなる

ということにも繋がるようになった。そのため、当時のように容易に在留資格を与えることはなくなった。フランスだけではなく、多くの国で定住につながるようなビザが難しいのはそのためである。日本人も数年だけ居住できる学生ビザとかワーホリビザ、または配偶者があってのビザ以外で在住資格を取得するのは非常に難しいのだ。

それでも殆どの日本人は在留資格が取れないなら諦めるだけだが(もちろん一部には不法に長年住んでいる日本人も存在する)、親戚全てがファミリーという感覚なので祖父母のいとこがいるとか、フランスに確立した●●人コミュニティを頼りに、不法に住み着いて、中には長年フランスに在住したという実績からついには帰化できる人もいる。

フランスはフランス人を人種や民族で分けるということは人種差別的であるとして、そういった国勢調査はしていないので、その実際の割合は定かではないけれども、増えていることは確かである。

その中で

フランスを変えてしまう

という懸念は、

全国の公立学校で宗教色のある服装を禁止

することに繋がった。これは建前上は、たとえばチベット仏教徒のような格好も、ユダヤのキッパも、そしてカトリックのシスター(マスール)のような格好もしてはダメということなのだが、現代において学校に通う年齢のそれらの宗教の子供たちがそういう格好をすることはあまりなく、明らかにイスラーム家庭の女子生徒に向けたものである。

ヒジャブがダメなのは知っていたが、長いスカートも問題になってるシーンがあって(結果的には宗教が理由で長いスカートをはいているとは限らない、という結論になっていたが)、少し驚いてしまった。

日本では個性的なおしゃれをする層の間で定期的に長いスカートが流行るけども、そういうスカートはどうなるんだろう…

とも思ったのだけど、おそらくそんなふうに明らかに宗教的じゃない場合はフランス人の感覚では流される。日本みたいに一律ダメという風にはならない、それがフランスだと思う。

さて、そんな風に学校でムスリム(女子だとムスリマになるけども)的な格好をしてはならないと定められているものの、同時にイスラーム教徒同士での諍いも時々描写されている。

一般的なフランス人の女子生徒みたいな格好をしている女の子に、男子が

「そんな格好をしてどういうつもりだ」

と凄んでいるシーンがある。

彼らの間で女性が髪を隠し、露出を抑えるのは、「女が男を誘惑するのは罪」という概念が根底にある。そして婚前交渉が大問題になることもあるのだが、その場合女性の方が大きく責められることが多い。欧州にあってさえ、時々「ふしだらなことをしでかした娘を殺した」という親や男兄弟が出てくる。それを名誉殺人という考えがいまだに存在する(全てのイスラーム教徒ではなく、実際には欧州で世代を重ねている家族だともう少し一般化しているともいう)。

私の元パートナーは、そういったことを「男女差別以外のなにものでもなく、そういう女性の人権のない習慣がフランスで横行するのが嫌だ」と言っていた。

この映画はフランスらしいノリだと思う。

レビューを見ていると、誰か1人に焦点を当てて掘り下げてるわけではないから、中身がない、という感想を持つ人がちらほら目立ったのだけれども、そういう人はフランス映画やドラマを見慣れていないのではないかな、と思う。

日本映画やヨーロッパ映画がハリウッド映画化されると、とたんにわかりやすい起承転結プロットに置き換えられてしまって

そうじゃないんだよなあ

と臍を噛むような気持ちになることもあるのだけど、特にフランス映画というものは明確な意図を押し付けないものが多いので、そういう意味ではこの映画は誰か1人の背景やら心情やらに照明を当てて観客に一律的な共感や感動を求めてはいない、典型的なフランスのノリだなあと思う。

それから個人的には、フランスでもこんな風にクラスがまとまって、みたいなことがあるんだな、と思ってしまった。

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30代からヨーロッパの某2カ国で生活したりもしてましたが、四十路を越えて帰国。今は老親との3人暮らし。フリーランス。
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40代女の闘いの日々。

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