実は私はバレエ鑑賞が大好き。
最近はあまり見てないものの、ヨーロッパにいた時は狂ったように見ていた。というより超一流のバレエを見るのが普通、みたいな生活を求めてヨーロッパ生活を目指したようなもの。
パリでパリオペラ座も何度も見ているし、モダンバレエの振り付け家で有名なノイマイヤーが率いてきたハンブルクバレエを見にハンブルクまで行ったこともあるが、
英国に住んでいた時はロンドンではない地方都市だったが1年に12回ほどロイヤルオペラハウス(コヴェントガーデン)かロンドンコロシアムに出かけて見ていた。
それらの劇場を本拠地とするロイヤルオペラハウスやイングリッシュナショナルバレエを見るのが主だったが、実はロンドンではボリショイやマリインスキーを始めとするロシアからの遠征も多いのでバレエファンにとっては最高の都市かもしれない。(モスクワとサンクトペテルブルクって離れてるしね…)
東京でも見てきたけれど、東京ではガラ(全幕公演ではなくて、作品の中の一部をソリスト級のダンサーが順に踊るタイプのもの)公演が3日とかいうことが多かったけど、ロンドンは白鳥とかドンキとかの全幕ものが何日かずつ続き、スターダンサー達が出てくるから選り取りみどりだったりした。
私が大好きなナターリヤ・オーシポワもボリショイからミハイロフスキーに移籍して、そこのプリンシパルとしてロンドンで公演した時のドンキを見たけれど、あれほど会場が興奮してスタンディングオベーションがやまないものは見たことなかった。
彼女はボリショイとしてもパリの炎という、これまた彼女の超絶技巧が映えまくる演目に出てたりしたが、ロンドンコロシアムでドンキを踊った後、おそらく大金が動いたのかロイヤルオペラバレエに移籍して今もプリンシパルとして活躍してるようである。
オーシポワ以外にも白鳥の黒鳥はマリインスキーのテリョーシキナで見たい!とか白鳥はザハロワ!ロパートキナ!とか、
とりあえず
ってことなのだ。(あ、でも日本が誇る吉田都さんとかすっごい好きだったし、高田茜ちゃんも繊細ですごく好きだあああ!それにやっぱパリオペもすごい好き。マリー=アニエス・ジロとか。)
前置きが長かったけれども、最近ちょっと遠ざかってるとはいえ、一流のバレエを見まくってきた私が
こちらを見たので、一応感想をば。
現役の「本物」バレリーナが演じてるのはイイ
そもそもバレエ映画って「ブラックスワン」のように「子供の時から習っていた」女優が「半年ほど専任講師をつけて特訓」してプリマ役を演じるか、本物のダンサーが演じるとするとガチの公演映画か、ドキュメンタリーということがほとんど。
私はナタリーポートマンは好きだけれども、正直プロのバレリーナ、それも一流バレエ団でソリストというと幼い頃から志して、ものすごくストイックに訓練を積んできた人の中からの選ばれし人たち、であるので、いくら習ってたといってもプロ希望で習ってたわけでもない女優が、大人になってから半年やそこら特訓したからってどうにかなるようなものではない。
まあ、あの映画自体はバレエそのもので魅せるわけではないから良いのだけど、なぜか一介のファンでしかない私は、この手の映画を見て
って気持ちになってしまうのだった。
蛇足だけど、リトルダンサー(Billy Elliot)は好き。あの少年の踊りは「どこらへんでロイヤルバレエスクール受けてみろ、って思わせるのかな?」というくらい別に上手じゃないけど、そこは今からバレエ学校に入る男の子だからいいのだ。
ま、何はともあれ、この「ボリショイ・バレエ 2人のスワン」は主役が本物のダンサーである。
とはいえ、ボリショイバレエではなく、ユリヤ役のMargarita Simonovaはポーランド国立バレエなのだが、プリンシパル(最高位)という話である。
カリーナ役を演じたのは、もっと無名のダンサーということなのだけど、冒頭のフェッテ(回転)対決ではドゥーブル(2回転)を入れてくるほどに踊れるし、何しろ体型が本物のバレリーナなので、納得して見ていられる。
バレリーナの体格、とくに首から肩にかけてのラインというのは長年かけて矯正され尽くしたものなので、ただスリムな体型で付け焼き刃に鍛えても備わらないものだ。
そりゃあ正直…本当の「ボリショイバレエ」のプリンシパルやソリストの踊りを1階の席で見てきてると、シモノワでもちょっと物足りないかなあと思ってはしまうけれど。
それでも、そんなガチのダンサーが、女優として演技しているのは面白い。
そして
これはバレエファンなら誰もが知るパリ・オペラ座の元エトワール(最高位)。
この人が最後の方で出てくるのだが、彼もゲストとしてセリフ少なめに出るとかではなく、しっかり俳優として機能してるのはなかなかに贅沢。
このレベルの元ダンサーで俳優として活躍してるのはバリシニコフくらいしか思いつかないけど、他に誰かいましたっけ?
地方の貧困家庭の少女のサクセスストーリー?としても一筋縄ではいかない
話としては、ザッと…
モスクワから遠い地方で、両親とも労働者階級とうかがえる家庭に生まれ、子供ながら少年とスリコンビを組んでいるユリア。
彼女の役目は自己流の踊りで人だかりを集め、彼女の踊りに見入ってる人のポケットから少年が財布をスリとるという仕組み。
そこでスられそうになった中年男性が元ボリショイのダンサーで、彼女を見込んで指導し、ボリショイスクールのオーディションへの道が開けた、というところから話は始まる。
日本ではバレリーナを目指すとなると親の経済負担はとてつもないが、ロシアやヨーロッパのバレエ学校というのは国立で、学費も寮費もほぼかからないことから可能なのである。その代わり競争は熾烈で卒業率も低いらしい。
ただ、多くの場合は入学試験のために個人レッスンを受けてきた子ばかりが入るので、ライバルのカリーナのように裕福な家庭の子供が多いのも必然である。
ボリショイバレエ学校に入学した11歳?から7年間も故郷にも帰れず、7年ぶりに帰った時には、その間に生まれた弟達に「誰?」と言われてしまう。
バレリーナのイメージと反対に、野生味あふれるユリアが、往年のバレエ教師(その昔は有名なバレリーナだったという設定)に強く見込まれ、時に素行で他の教師などからの反感を買いつつも、卒業公演で主役に選ばれる。
しかし7年ぶりに帰った実家の貧困を目の当たりにし、カリーナの母に買収されてオーロラ役を放棄してしまう…
というような話。
これは元々テレビシリーズだったのが色々カットされて1本の映画になっているらしく、ストーリーは結構急な展開になってたり腑に落ちない点もあるが、
など色んなドラマがギュッと凝縮されていて、場面場面の要素を一つ一つ楽しんでいくこともできる。
いつもは御伽噺を踊りで表現している本物のダンサー達が、人間臭いドラマを演じ切っているのは非常に見もの。
Amazon Primeでは結構バレエものが見られる。ドキュメンタリーも多いのだが、同じようにプロのバレエダンサーが本当に演じているという意味では
も結構面白かった。近いうちレビュー記事書きます。
ちなみに私は2008年製のTVに
を接続してAmazon PrimeやNetflixなどを見ている。映画をPCやタブレットで見るのはオススメしない。
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